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神戸地方裁判所 昭和33年(ヨ)292号 判決

債権者 岡崎忠一郎 外九名

債務者 合名会社信和工業所

主文

I  債務者は、本案判決の確定に至るまで、

(イ)  債務者が債権者小西正博、同岩崎武二、同山崎勝、同中釜勇及び同久保哲男に対し昭和三十三年六月九日になした同年七月九日限り解雇する旨、並びに、債権者渥美晴己及び同安原清次郎に対し同年六月十日になした即日解雇する旨の各意思表示がいずれも効力を生じなかつたものとして右債権者等を処遇し、

(ロ)  かつ、

(1)  債権者小西正博に対し金七万三千八十円及び昭和三十四年三月以降毎月末日に金一万四百四十円ずつ、

(2)  債権者岩崎武二に対し金十二万六千円及び同月以降毎月末日に金一万八千円ずつ、

(3)  債権者山崎勝に対し金十万九千六十円及び同月以降毎月末日に金一万五千五百八十円ずつ、

(4)  債権者中釜勇に対し金十一万五千五百円及び同月以降毎月末日に金一万六千五百円ずつ、

(5)  債権者久保哲男に対し金十万二千九百円及び同月以降毎月末日に金一万四千七百円ずつ、

(6)  債権者渥美晴己に対し金二十万二千四百円及び同月以降毎月末日に金二万五千三百円ずつ、

(7)  債権者安原清次郎に対し金十一万一千二百円及び同月以降毎月末日に金一万三千九百円ずつ、

を支払え。

II  債権者岡崎忠一郎、同中地留一及び同重光容輝の申請を棄却する。

III  申請費用中、債権者小西正博、同岩崎武二、同山崎勝、同中釜勇、同久保哲男、同渥美晴己及び同安原清次郎の支出にかかる部分の全額及び債務者の支出にかかる部分の十分の七は、債務者の負担とし、債務者の支出にかかる部分の十分の一ずつは、債権者岡崎忠一郎、同中地留一及び同重光容輝の各負担とし、右債権者三名の支出にかかる部分は、同債権者等の各自負担とする。

(注、無保証)

事実

債権者等訴訟代理人は、主文第I項(イ)同旨並びに「債務者は、本案判決の確定に至るまで、債務者が債権者岡崎忠一郎、同中地留一及び同重光容輝に対し昭和三十三年五月二十七日になした同年六月二十七日限り解雇する旨の各意思表示がいずれも効力を生じなかつたものとして右債権者等を処遇し、かつ、債務者は、債権者岡崎忠一郎に対し金一万四千七百五十円ずつ、同中地留一に対し金一万三千八百円ずつ、同重光容輝に対し金八千円ずつ、同渥美晴己に対し金二万五千三百円ずつ、同安原清次郎に対し金一万三千九百円ずつを昭和三十三年七月末日以降毎月末日に、同小西正博に対し金一万四百四十円ずつ、同岩崎武二に対し金一万八千円ずつ、同山崎勝に対し金一万五千五百八十円ずつ、同中釜勇に対し金一万六千五百円ずつ、同久保哲男に対し金一万四千七百円ずつを同年八月末日以降毎月末日にそれぞれ支払え。」との判決を求めその理由として、次のとおり述べた。

一、債務者は、川崎重工業株式会社(以下単に「川崎重工」という。)等から船舶鉄ぎ装関係の仕事を請け負うことを業とする会社であつて、本社工場、大橋分工場の外右川崎重工内に作業場を有しており、本社工場の工員は、昭和三十三年五月二十七日現在職長以下四十二名であつて、その内十三名が見習工である。

二、債権者等は、いずれも債務者に雇われ、本社工場に勤務する従業員であつて、債権者中地留一は塗装工(責任者)、同重光容輝は見習工、同山崎勝、同渥美晴己は電気溶接工(平工員)、同安原清次郎は道具番(責任者)であり、その他の債権者はいずれも製缶工(平工員)である。

三、債務者は、債権者岡崎、同中地、同重光に対し、昭和三十三年五月二十七日、即日右各債権者に到達した同日付書面で、同年六月二十七日限り解雇する旨同小西正博、同岩崎武二、同山崎勝、同中釜勇、同久保哲男に対し、同年六月九日、口頭で同年七月九日限り解雇する旨、同渥美晴己、同安原清次郎に対し同年六月十日同日付の翌十一日右各債権者に到達した書面で即日解雇する旨の各意思表示をなした。

四、しかしながら、右解雇の意思表示は、次のいずれの点からみても無効である。

(一)  まず、債務者会社の全事業場を通じ適用される就業規則の第三十二条には、従業員を解雇することができる事由を掲記しているが、後述のとおり、債権者等はいずれもこれに該当しない。もつとも、債務者は、同条第二号にいわゆる「已むを得ない業務上の都合」があつたとして右解雇が有効であると主張するのであるが、右主張は根拠がない。この点に関する債務者の主張事実中、債権者等に対する解雇処分がなされた当時本社工場の仕事が閑散で事業の見通しが暗かつたことは、これを認めるが、そのため同工場の人員整理を必要とする程であつたとは思われない。その証拠に、債務者は、その頃金約一千万円で山陽線沿線のゼームス山の土地を買い入れ、現在整地作業中である。また、かりに当時本社工場の人員整理が必要であつたとしても、使用者たる債務者は、全従業員について好き嫌いということでなしに勤務成績、勤務年限、年令、家庭の事情等諸般の事情を比較考慮した上合理的基準を立てて解雇の対象を決すべきであつたと思われるが、債権者等は、いずれも中等以上の勤務成績の者であるし、その他の事情を考えてみても、特にこれを選んで解雇処分に付したのは、全くいわれのないことである。債務者は、故あつて職種別責任者と見習工を解雇の対象から除外したとか、債権者山崎と同渥美については川崎重工内の作業場に配置転換するため配慮するところがあつたとか主張しているがかような主張事実をそのまま認めることはできない。債務者等を解雇した本当のねらいは、後述のとおり別のところにある。その他本件解雇処分が就業規則上の根拠を有するものであるとして債務者の主張する事実は、すべてこれを争う。よつて、本件解雇処分は、効力を生ずるに由がないものである。

(二)  それでは債務者は、いかなる意図をもつて債権者等を解雇したのであろうか。それは、本社工場の工員の間で、昭和三十三年五月初旬、債権者渥美、同安原を中心として、労働組合の結成が企てられ、まず債権者等全員を含む約二十名の賛同を得て、同月三十一日結成大会を開き、即日信和工業労働組合を結成したところ、債務者は、右労働組合結成の動きを察知し、債権者等が右組合に加入したことを嫌い、或いは右組合を弾圧粉砕するため本件解雇に及んだというのが真相である。この事実は、同年五月から六月頃に解雇されたものは債権者等を含め全員組合員であること、及び昭和三十二年中債務者の従業員約二十名が神戸合同労働組合に加入しようとした際、債務者はその首謀者たる鳥井誠之を解雇してこれを阻止したことなどからも明らかである。

(三)  かりに以上述べたところがいずれも本件解雇の無効事由にならないとしても右解雇は、債務者の解雇権の濫用によるものといわなければならない。

五、債権者等は、本件解雇の意思表示を受けた当時、債務者から、それぞれ平均して、一ケ月当り申請の趣旨記載の金額の賃金を受けていた。債務者会社の従業員に対する賃金は、前月二十八日から当月十二日までの分を毎月十五日に、当月十三日から同月二十七日までの分を毎月末日に支払うべきものと定められている。そして前述のとおり本件解雇処分が無効であるとすると、債権者等と債務者との間にはなお労働契約関係が継続しているわけであるから、債権者等は、右解雇後も債務者に対し前記割合の賃金の支払を請求し得るものといわねばならない。

六、債権者等は、労働者として賃金だけで生活して来たものであつて、現在ゴム工場の臨時雑役工として一日平均二百円の賃金を受けている債権者小西を除き、全員失業保険金以外の収入がない。しかも、債権者小西の父は、中風のため就業できず、母は日雇、姉(二十三才)は無職、妹(十五才)は就学中である。

七、以上のとおりであるから債権者等は、本件仮処分命令を得なければ、回復し難い事態を生ずる虞があるので本件申請に及んだ次第である。

八、なお、債務者の債権者渥美、同安原に対する解雇予告手当の支給に関する主張事実の中、債務者がその主張の日労働基準法所定の解雇予告手当として、その主張の金員を提供したことは認める。ただ債権者渥美、同安原はいずれも、同日債務者に対し右金員を賃金の内払として受領する旨書面で通知したうえ右金員を受領したものである。

債務者訴訟代理人は、「本件申請を棄却する。」との判決を求め、答弁として、次のとおり述べた。

一、債権者等の主張事実の中、債務者が債権者等主張の営業をなし、債権者等主張のとおりの作業場を有すること、債権者等がいずれも債務者会社の本社工場所属の従業員であつたこと、債務者が債権者等主張の日、債権者等主張のとおり、口頭或いは、債権者主張の日に到達した債権者等主張の日付の書面で債権者主張の日から効力を生ずる各解雇の意思表示をなしたこと、債務者会社の全事業場を通じ適用される就業規則に債権者等主張どおりの定めのあること、債権者等主張の平均賃金額及び債務者会社の従業員に対する賃金支払の方法はすべてこれを認め、その余はこれを争う。なお、前記解雇の意思表示をなした当時本社工場の工員総数は四十二名であるが、その内十二名が見習工であり、債権者等は全員責任者でも見習工でもなく、債権者山崎、同渥美は電気熔接工、同安原は道具番でその余の債権者はいずれも製缶工であつた。

二、債務者の債権者等に対する本件解雇の意思表示は、「已むを得ない業務上の都合によるとき」は従業員を解雇することができるという就業規則第三十二条第二号に基くものであつて、いずれも正当の理由があるものである。すなわち、債務者の本社工場は、製缶作業を行うため製缶工、ガス工及び電気熔接工を、大橋分工場は、仕上作業のための旋盤工、仕上工を、川崎重工内作業場は、薄板作業のための板金工及び熔接作業のための電気熔接工を必要としているが、本社工場における製缶作業については、採算上毎月二百四十万円前後の受注を要するところ近時の造船界の不況に伴い受注が漸次減退し、昭和三十三年五月には金十五万円、同年六月には金四万円に過ぎない事態となつたため、同工場には、職種別責任者及び見習工だけを残し他の工員を整理することとした。このような整理基準を立てた理由はここでいう見習工とは二年間を見習期間として技術養成中のものを指すが、同人等は爾後約一か年余で養成期間満了し、その頃には、受注が増加し、本社工場を再建できるかもしれないとの見通し、と見習期間中は使用者の営業成績にかかわらずこれを解雇しない業界の慣行によつたものであり、また職種別責任者は、本社工場再建のときの作業基盤たるべきものであるうえ当時の受注作業の遂行と前記見習工の指導のため残留を必要と認めたためである。もつとも債務者会社においては、受注量の比較的多い他の作業場に工員を配置転換することによりできる限り被解雇者の数を少くする意図であつたので、ことに電気熔接工である債権者渥美及び同山崎などはできれば川崎重工内作業場にでも回したかつたのであるが、同作業場において熔接業に従事する者は、川崎重工の施行する技能試験の合格者に限られ、その受験には予め川崎重工の許可が必要であると川崎重工が定めているところ、債権者渥美は、以前川崎重工の工員であつたし、同山崎は、以前川崎重工の下請業者たる星野鉄工所の養成工であつた関係上、右技能試験を受ける許可が得られなかつたという事情があり、また、他の債権者等は、その技能種目からして本社工場以外に受け入れることができなかつたのである。こうした事情で債務者は、本社工場の工員中職種別責任者及び見習工を除く全員を解雇したのであつて、右解雇に当つては個々の工員の作業成績や家庭の事情について全く顧慮していない。

三、本件解雇は、右の理由によるものであつて、債権者等の労働組合結成、その準備、加入等を理由とするものではない。債権者等が労働組合を結成したこと、債権者等が組合員であること等については、本件解雇の意思表示前は勿論現在に至るまで、債務者は右組合から通知を受けていないし、全く知らない。なお債権者等は、昭和三十二年中債務者において従業員等の神戸合同労組加盟の意図を弾圧、粉粋した事実があると主張するが、右従業員等の意図が実現しなかつたのは、指導者の島井誠之がその頃負傷入院し、退院後自己の希望により退職したためであつて、債務者において右組合活動に干渉を加えたことは全くない。

四、なお、債務者は、昭和三十三年六月十三日労働基準法に定める解雇予告に代わる手当として、債権者渥美に対し、同人の平均賃金の三十日分を超える金二万五千三百円を、債権者安原に対し、同じく金一万三千九百円を提供したところ、同人等はそれぞれ受領した。

疎明〈省略〉

理由

一、債権者重光容輝の訴訟能力について

債権者重光容輝に対する本人訊問の結果によれば、同債権者は大韓民国慶尚南道に本籍を有する年令十七才の者であると認められるのであるが、記録によれば同債権者は親権を行う者又は後見人を介することなく自ら直接弁護士竹内信一及び同井藤誉志雄を訴訟代理人に選任し、右弁護士両名が同債権者を代理して本件仮処分命令申請をなしたことが明らかである。

ところで、外国人たる同債権者が一定の私権又は私法上の法律関係にかかる訴訟について訴訟能力を有するかどうかは、第一次的には民事訴訟法第四十五条、法例第三条第一項により、同債権者がその本国法たる大韓民国の法律において行為能力を認められているかどうかを基準として判定せられるべきものであるが、民事訴訟法第五十一条によれば、かりに同債権者が本国法上行為能力を有せず、ひいては、わが民事訴訟法第四十五条、法例第三条第一項によれば訴訟能力を有しないとしても、かりにわが民事訴訟法民法、その他日本の実質法をこれに適用すれば訴訟能力を有すべきときはこれを訴訟能力者とみなすべきものであるから、大韓民国法の行為能力に関する規定がどのようになつているかの検討はしばらくおいて、以下もつぱら同債権者が日本の法律(実質法)によれば訴訟能力を有すべきものかどうかについて考えることとする。しかるところ、未成年者が対価を得てなすべき労務に服している場合において当該未成年者は独立して賃金を請求することができ、その親権を行う者又は後見人といえども未成年者に代つて賃金の支払を受領してはならないことは労働基準法第五十九条の明記するところであり、また同法第五十八条は親権を行う者又は後見人が未成年者に代つて労働契約を締結することを禁止しているのであるが、これらの規定の趣意とするところは、親がほしいままに子に代つて労働契約を締結しその子の名で前借金を受けとり、或いは、使用者に依頼して子の意思にかかわりなくその賃金を自己に送金させるなど、親が子を自己の所有物と心得てこれを食いものにする封建的因習に鑑み、親権を行う者又は後見人の法定代理権の濫用に備えてこれを制限するものであるが、さらにこれらの規定の基礎をなす法理は、労務の給付ということが元来事実的にも観念的にも労働者の人格と分離し得ないものであるから、或る人が民法上の未成年者としてその身分上、或いは財産上の生活関係について一般的に親権を行う者又は後見人等他人格による管理決定に服し又は能力の補充を受くべき場合に、若し親権を行う者、後見人等による右のような包括的管理決定権能若くは監督、保護の機能を当該未成年者自身の労務給付に関してまで推及しうるものということになれば、結局他人の意思に基ずいて未成年者の労務給付を目的とする雇用関係を創設し若くは創設せられている雇用関係に他人意思の関与を許し、当該未成年者をしてその労務給付を媒介して他人の意思支配に服従隷属せしめることに帰することになるのであるが、他人意思による人格支配を許さないとすることはそもそも法の拠つて立つ基本原理であつて、親権又は後見人等未成年者保護のための制度であつても右基本原理の変更を来すに至る如きは制度の本来の趣旨を超脱するものとして許さるべきでないと考えられる(民法第八百二十四条但書は、上記の当然の事理を明らかにしたものであり、また労働基準法第五十八条第二項の規定もこの事理を前提としなければ妥当な解釈ができない。)ところから、たとえ未成年者であつても自らの意思で締結した具体的労働契約を媒介して現に特定の使用者との間に継続的労務給付をめぐる生活関係を営んでいる者については、少くとも当該生活関係の範囲内において法律上これを完全独立の人格者として遇することとし、その趣旨を親権を行う者、後見人等身分法上の監督保護者に対する関係においても保障せんとするものと解するのが相当である。してみれば、労働契約関係について未成年労働者が自ら独立してなし得べき行為の範囲は労働基準法第五十九条に明記されているところの既存の基本たる雇用関係より流出した個々具体的な支分的権利の行使たる賃金の請求及び受領に止らず、必要の存する限りは基本たる労働関係そのものの形成を目的とするところの労働契約を締結し、さらにその存続、態様を使用者に対して主張することにも及び得べく、またかかる主張の有効完全を期するためには、その方法を裁判外にのみ限定すべき合理的理由はなく、裁判上右主張をなす場合については民事訴訟法第四十九条但書にいわゆる未成年者が独立して法律行為をなすことを得る場合に該当すると解すべきである。これを要するに、日本の法律(実質法)によれば、債権者重光容輝は、前示のとおり、債務者との間の雇用関係の存続を主張してその暫定的形成を求め、かつ雇用関係に基ずく賃金の仮払を求める本件仮処分命令申請事件については、独立して完全な訴訟能力を有するものであつて、同債権者が本件申請事件につき、その本国法により訴訟能力を有するか否かにかかわりなく訴訟能力者とみなされるから、結局同債権者が自らなした前記訴訟委任は有効といわなければならない。

二、債務者と債権者等の間の雇用関係並びに債務者が債権者等に対して解雇の意思表示をしたこと

債務者が船舶鉄ぎ装関係の工事請負を目的とする会社であつて、事業場として本社工場、大橋分工場及び川崎重工構内の作業場を有すること債権者等がいずれも右本社工場所属の工員として債務者に雇われていたこと、債務者が、債権者岡崎忠一郎、同中地留一、同重光容輝の三名に対しいずれも昭和三十三年五月二十七日、即日右各債務者に到達した書面を以て、同年六月二十七日限り解雇する旨、債権者小西正博、同岩崎武二、同山崎勝、同中釜勇、同久保哲男の五名に対してはいずれも同年六月九日口頭を以て同年七月九日限り解雇する旨、債権者渥美晴己、同安原清次郎両名に対してはいずれも同年六月十日書面を以て即日解雇する旨各意思表示をなし、債権者渥美及び同安原に対する右書面はいずれも同年六月十一日右債権者両名に到達したこと、並びに右解雇通告の当時本社工場の工員総数が職長以下四十二名であつて、債権者山崎勝、同渥美晴己は各電気熔接工、債権者岡崎忠一郎、同小西正博、同岩崎武二、同中釜勇、同久保哲男は各製罐工(平工員)であつたことはいずれも当事者間に争がない。そして弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第四、五号証並びに債務者代表者松木信男に対する本人訊問の結果(但し後記措信しない部分を除く。)を綜合すれば、債権者中地留一及び同重光容輝はいずれも製罐工であり、債権者安原清次郎は道具番として本社工場における工具の出入等の管理を単独担当していたものであるが、右三名は共に平工員以上の特別の責任を有する地位に在つたものでないこと、並びに債務者会社の従業員中には債権者等のようないわゆる平工員の外約二年間製罐工としての技能を習得させるため教習中の見習工または養成工と呼ばれる者がいたのであるが、債権者重光容輝は右見習工には該当しないものであることが疎明せられる。

三、本件解雇の効力の存否について

(一)  就業規則の存在並びに解雇の効力と就業規則との関係

そして債務者の全事業場を通じて適用される就業規則において従業員を解雇し得べき事由が定められていることは当時者間に争がなく、成立に争のない乙第二号証によれば右就業規則第三十二条に

「従業員が左の各号の一に該当する時は三十日前に予告するか三十日分の平均賃金を支給して解雇する。

一、精神若しくは身体に故障があるかまたは虚弱老衰若しくは疾病のため業務に堪えないと認めたとき。

二、已むを得ない業務上の都合によるとき。

三、其他前二号に準ずる已むを得ない事由のあるとき。」

と記載されていることが認められるから、債権者等に対する前記解雇の意思表示の効力はまず各債権者等につき就業規則所定の右事由に該当すべき事情の存否にしたがつて決せられるべきものである。

(二)  解雇当時における債務者会社の経営事情

ところで、成立に争のない乙第三号証に証人松木喬茂、同鳥井誠之、同野田長之助の各証言並びに債務者代表者松木信男に対する本人訊問の結果(但し上記証言並びに本人訊問の結果中後記措信しない部分を除く。)を綜合すれば、債務者は川崎重工神戸造船所における船舶建造の部分的な工事請負を主たる営業内容とし事実上川崎重工の専属的下請業者として存続して来たものであり、殊にその本社工場は専ら右請負工事の中核をなす製罐作業を目的とするものであつて、企業経営の立場よりすれば右工場においては少くとも毎月百五十万円乃至金二百万円相当の受注工事量の保持を必要とするところ、昭和三十二年後半より造船業界全般が受注の伸び悩み、手持工事量の減少、一般経済の不況等に因り沈滞の情勢に立ち至るや、直接その影響を受けて元請たる川崎重工からの下請注文工事量も顕著に減少の勢を示し、昭和三十三年春頃になると遠からず新しい注文は途絶し手持工事量もやがて皆無となるべき事態が予測せられるに至つたこと、即ち昭和三十二年四月以降同年十一月頃までは平均して一ケ月金百万円前後相当の受注量があつたのに、昭和三十三年に入ると一月の約金二百二十万円の受注量は二月には僅か金二十万円、三月は金七十万円と激減し、しかのみならず、その後における受注状況の継続的好転は到底期待し得ず、川崎重工以外に新たな取引先を獲得して所要工事量の確保を図つてみたが、これもにわかには成果が挙らず、企業の存続維持のためには結局人員整理等規模縮小による経営合理化を実現したうえで経済一般の景気好転を待たなければならない状況にあつたことが疎明せられる。

(三)  債権者重光容輝、同中地留一及び同岡崎忠一郎に関する個別的解雇事由の存否並びに解雇の効力

前掲乙第四、五号証に債務者代表者本人訊問の結果(但し後記信用しない部分を除く。)を綜合すれば、債権者重光容輝はさきに認定したように同人がいわゆる養成工でないとの事実に加えて、同人は、学校卒業生として、又は職業安定所を介するなど正規の順序を履んで債務者会社に雇い入れられたものでなく、以前神戸市長田区にあつた中村鉄工所という町工場に雇われていたが、右鉄工所が経営行詰りのため事業を廃してその工場を債務者に賃貸するに至つた際同債権者の貧困な家庭事情に同情した同鉄工所の事業主の懇願により特に暫くの間債務者会社において働くことを許されたものであつて、他の工員一般と同程度の技能を有していないばかりでなく、その仕事振りも真面目でなかつたのであり、債権者中地留一は就業時間数が他の工員に比較してかなり少く仕事にも不熱心、不真面目との評定を受くべきものであり、また債権者岡崎忠一郎は就業時間数においてこそ特に他の工員と比較して少いということはなかつたが、日常の作業能率が低く右重光及び中地と同程度にその就業態度が不真面目であると認められたので、債務者としては前記(二)に説示したような経営事情に基き低能率者排除の目的をもつて同人等を解雇するに至つたものであることが疎明せられる。右債権者等三名はいずれも同人等の右解雇がその技能劣悪な者又は勤務成績の不良な者を排除せんとする等専ら企業維持の目的と必要に出たものでなく、右債権者等がいずれも労働組合結成の活動をなし、結成せられた組合に加入したことを嫌忌し、その組合活動を抑圧する目的に基くものと主張する。なるほど債務者会社本社工場従業員により右債権者等の解雇と前後して労働組合が結成せられたこと、右債権者等がいずれも右組合結成の過程に関与し、結成後これに加入したことはいずれも後記説示のとおりであるが、前掲乙第四、五号各証並びに債務者代表者本人訊問の結果によれば、未だ組合結成完了に至らずして一挙に解雇の通告を受けたものは右債権者三名に河原四郎を加えた僅か四名にすぎず、右河原四郎もその就業日数が他の工員に比較して少く、その勤務成績は不良と評定せらるべきものであつたことが疎明せられることを考え、更に右組合結成に関する後記認定の如き経過に照らせば、右債権者等三名の解雇が債権者等主張のようにその組合活動を排除妨害する意図に出たものであることは到底認めることを得ず、他に右債権者等の主張を肯認するに足る疎明はない。

そうすると債権者重光容輝、同中地留一及び同岡崎忠一郎に対する前記解雇は就業規則第三十二条第二号に定める「已むを得ない業務上の都合によるとき」に該当するものとしていずれも有効といわなければならず、右解雇が権利の濫用であるとする債権者等訴訟代理人の主張は、採用できない。

(四)  債権者等の中前記の三名(重光容輝、中地留一及び岡崎忠一郎)を除く爾余の債権者(以下単に債権者等と略称することがある。)に対する本件解雇の効力

(イ)  債務者会社の側における経営上の事情は前に三の(二)に示したとおりであるが、このような事情にあつた債務者会社本社工場における約四十名の従業員の側における動向を見るに、前記乙第四号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第五号証並びに債権者渥美晴己に対する本人訊問の結果によれば、昭和三十三年五月初頃に至ると従業員の間にも漠然とながら三の(二)に述べたような造船業界全般の不況に基く雇用の不安定、労働条件の悪化の到来が予測せられるようになつたのを背景とし、直接的には差し当り同年夏期におけるお盆手当の支給を要求しようとの意向に促されて従業員の団結を実現しようとの気運が生じ、債権者渥美晴己、同安原清次郎等が中心となつて本社工場内において従業員個々に労働組合結成を勧奨し、更に同月二十日頃からは工場内において組合結成賛同の署名を求める運動を進めた結果、同月三十一日午後五時神戸市長田区五番町二丁目大森宅に重光等前記三名を含めた債権者等外本社工場従業員十八名が参集したうえ組合結成大会を開いて労働組合を結成し、右債権者等は全員組合に加入し、役員として、債権者渥美晴己を組合長、債権者安原清次郎を副組合長、債権者岩崎武二を組合会計担当者、債権者久保哲男、同山崎勝を各組合執行委員に選任したが、右結成大会においては組合結成後は債務者に対して同年夏期におけるお盆手当の要求をなすに止らず爾後組合員たる従業員の労働条件に関する事項はすべて組合に諮つて決するよう会社に申入れるべきことを確認し、同年六月九日午後終業直後本社工場事務所において債権者渥美晴己、同安原清次郎の両名が債務者会社代表者(社長)松木信男に面接して右組合結成を通告すると共に爾後従業員を解雇しようとする場合は予めその旨組合に諮られたいと要望したが、社長の了承を得るに至らず物別れとなつたこと、並びに、債務者会社本社工場において専ら事務関係を担当して従業員側よりすれば会社側と目されていた浜塚某が前記署名募集中の現場を目撃し、債権者渥美もまたその際同人に対し組合結成の意図を話したことがあり、かつその場には債権者久保哲男、同山崎勝、同中釜勇並びに債権者等と同時に解雇せられた篠原勇も居合わせたことが疎明せられる。

(ロ)  ところで、証人鳥井誠之の証言によれば、これより前債務者会社従業員の間においては本社工場従業員を中心として昭和三十一年十月頃から労働組合結成の議が起り、昭和三十二年一月頃組合結成大会を開催して神戸合同労働組合信和工業支部を作り、鳥井誠之を組合長に選び、副委員長に山崎某、書記長に広川某、会計担当に岩崎武二を夫々選出して発足し、債務者会社に対しては直接社長に口頭をもつて組合結成の事実を通告したのであるが、間もなく鳥井組合長が負傷のため入院中、会計担当の前記岩崎その他山田及び長谷川の三名が相次いでいずれも債務者会社の職長佐野国太郎の妻から佐野の味方をして組合をやめて呉れと頼まれたからというので組合脱退を申出たこと、右組合結成当時前記佐野職長が従業員等に対して「町工場に労働組合など無用である」と話したことがあり、また同人の息子で同じく債務者会社本社工場に働いている佐野正広が組合結成の翌日鳥井に対し「町工場には組合はいらぬからやめた方が良い。」と話したことがあること、並びに鳥井誠之が約三ケ月後退院して工場に帰つてみたときは前記組合の中心であつた者で既に退職した者も多く事実上組合の団結は消滅崩壊して有名無実と化していたことがいずれも疎明せられる。

そして前記甲第五号証に証人野田長之助の証言、債権者渥美晴己及び債務者代表者松木信男に対する各本人訊問の結果(但し右証言及び債務者代表者本人訊問の結果中後記信用しない部分を除く。)を綜合すれば、前記佐野国太郎は債務者会社本社工場において唯一人の職長であつて、債務者会社の事業の見通しが先に述べたように悪化して来て社長等経営担当者において経営維持の対策を講ぜざるを得なくなると終始社長やその子息であつて会社の事務全般を処理している松木喬茂等の相談相手となり、主として従業員その他現場の事情に明るい立場にあるものとして経営に参画し債権者等の本権解雇の決定にも関与していたのであつて、債権者等現場の労働者より見ればいわゆる会社側の人間に属する地位にあつたこと、佐野国太郎が六月十日債権者渥美晴己に対し「組合を作つて数人と団体交渉のような行為をしなかつたならば会社は馘首しないでおいたのにいらぬことをするから首を切られるのだ。」と口外したことが疎明せられる。

(ハ)  次に債権者等各人についてその個別的事情を見るのに、いずれもその技能、勤務成績、健康状態等が他に比較し特に劣悪で全体としての作業能率の維持を妨げるものであつたと認むべき何等の疎明なく、却つて前記乙第四、五号証並に証人野田長之助、同岩橋通敏、同松木喬茂の各証言及び債務者会社代表者本人訊問の結果(右証言及び本人訊問の結果中後記信用しない部分を除く。)に弁論の全趣旨を綜合すれば、債権者等の各技能ないし勤務成績は債務者会社従業員中では少くとも普通若しくはそれ以上であつて、むしろ本社工場の作業遂行に関しては中核的労働力の提供者であつたことが認められる。

(ニ)  更に債権者等の所属していた本社工場と他の事業場である大橋工場及び川崎重工構内における出張作業現場の各事情を比較検討すると、前記乙第三号証及び債務者代表者本人訊問の結果によれば、昭和三十三年五月下旬当時における従業員の数は本社工場が約四十名、大橋工場は約二十名、川崎重工構内において約七十数名であつて、この中本社工場以外において同年五月頃の同一時期に従業員の解雇が行われたのは大橋工場における四名のみであつて、同一のしかもその規模も極く小さい企業主体といい得る債務会社に所属しながら本社工場における本件解雇と同程度、同規模の人員整理は遂に他の事業場において行われなかつたことが窺われるのである。

そこで以上(イ)乃至(ニ)に認定した事実を綜合考察するときは、さきに認定したとおり債務者会社としてはその企業の維持存続が困難な客観的情勢にあつて幾許かの従業員を整理し規模を縮小して現在の苦況を切り抜けなければならない必要の存したことは否定し得ないところであるが、さりとて債権者等に対する本件解雇の意思表示を以て右企業合理化の目的実現方策の具体化としてなされたものとは到底解し得ず、むしろ直接的には右債権者等による前記認定の組合結成を嫌忌し、組合活動を阻害し更には組合を崩壊せしめることを企図して急遽解雇の挙に出たものであることが容易に推認せられるのである。債務者は、債権者等の前記組合結成の事実を事前に全く察知せず、債務者会社としては専ら企業の維持、合理化を目的として、通常ボーシンと呼ばれている現場責任者及び養成工を除く全従業員を解雇するとの一般的基準を設定し劃一的に右基準を適用した結果債権者等を解雇するに至つたものであつて、債権者等の組合活動を阻害せんとの意図は毫も存しなかつたと主張しており、証人野田長之助、同松木喬茂及び債務者会社代表者松木信男は、いずれも右に副う供述をしているのであるが、前掲(イ)ないし(ニ)の諸認定事実に照らし、かつ、工員中の中堅層とも見られる者をことさらに排除するような解雇者選定の一般的基準なるものが企業の維持、経営の合理化の目的からみて適切とは常識上考えられないことからして、これらの供述にはにわかに信を措くことができない。

そしてこのように労働者解雇の背景とし企業の側よりすれば、企業規模の縮小等による合理化を必要とする客観的情勢が存した場合においても、具体的には当該労働者等が組合結成のため活動するのを嫌忌してこれを事業場より排除し、或は既に結成された組合を崩壊に至らしめることを直接に意図して解雇者の個別的選定解雇の時期の決定等がなされた場合については、前記のような企業自体の立場における一般的な客観情勢の存在はもはや右解雇の正当性の存否、効力の有無を左右すべき理由とはなり得ないものといわなければならない。何となれば、かかる解雇処分は、企業自体の立場における客観情勢を理由としてなされたものでなく、本件の事案についていえば就業規則掲記の「已むを得ない業務上の都合によるとき」という解雇事由に基くものといえないわけであるから、右の客観情勢の存否内容を検討することは、当該解雇処分の効力の有無を判断するについては無意味であると考えられるし、更には、一定の企業に従業する労働者にとつて一般経済界が不況のすう勢に在る場合や当該企業の不振行詰りの予測される場合においてこそ、その団結の必要は一層現実的かつ切実なものとなるということも、否定し難い事情であるからである。

したがつて右債権者等に対する解雇の意思表示はいずれも前記就業規則所定の事由に該当しない無効のものといわなければならない。

(五)  そうすると右債権者等と債務者との間の前認定の各雇用関係はなお存在しているものというべく、右債権者等が前記解雇の意思表示を受けた当時において各その平均賃金として一ケ月当り債権者渥美晴己が一ケ月当り金二万五千三百円同安原清次郎が金一万三千九百円、同小西正博が金一万四百四十円、同岩崎武二が金一万八千円、同山崎勝が金一万五千五百八十円、同中釜勇が金一万六千五百九十円及び同久保哲男が金一万四千七百円の賃金を受けていたこと及び債務者会社の賃金支払方法は前月二十八日以降当月十二日までの分を毎月十五日に、当月十三日以降同月二十七日までの分を毎月末日に支払うべきことと定められていたことは当事者間に争ないところであるから、右債権者等は賃金として右定めに従つて前記金額の支払を求める権利があること明らかである。もつとも、債権者渥美晴己及び同安原清次郎の両名については、右両名が昭和三十三年六月十三日債務者会社からそれぞれ金二万五千三百円及び金一万三千九百円を受領したこと、右各金員がいずれも労働基準法第二十条所定のいわゆる解雇予告手当として提供されたものであることは、当時者間に争のないところであるが、同債権者等に対する解雇処分を無効と解すべきことは前判示のとおりであるから、右金員の支払が解雇予告手当のそれとしての効力を生じ得ないことは、いうまでもないけれども、たとえ、右債権者両名がその主張するとおり債務者に対し右金員を賃金の内払として受領する旨書面で通知したうえこれを受領したからといつて、その提供が解雇予告手当としてなされたことを否定できない以上、右債権者両名に対する解雇処分の無効を理由として、右金員の授受を賃金の内払とみなすことができず、これを以て前記賃金請求権の存否、範囲になんらかの影響を与えるものとなすことを得ない。

四、債権者重光容輝、同中地留一、同岡崎忠一郎を除く爾余の債権者等についての仮処分の必要性の存否について

同債権者等に対する解雇処分が無効であり、債務者会社との間に労働契約関係がなお継続していると解すべきは前判示のとおりであるが、それにもかかわらず現状では債務者により就業を拒否され職場から排除されていることは弁論の全趣旨により明らかであるから、同債権者等は、現にその労働者としての基本的権利たる団結権の侵害を受けているものというべきところ、個々の労働者たる債権者各自においても裁判外又は裁判上その救済を求めることができると解すべきであるが、右違法状態の除去を命ずる本案判決の確定を待つにおいては、それまでに同債権者等の受けるであろう損害は、後記の金額面を除外してもかなり甚大であるといわねばならないから、かかる現在の著しい損害を避止するため民事訴訟法第七百六十条の仮処分として解雇の効力の暫定的停止を命ずることは、後記の賃金仮払とは独立にその実益と必要があるものといわねばならない。更に弁論の全趣旨によれば債権者等は債務者会社に就労中労働者として債務者から支払を受ける賃金のみに依存して自己及び家族の生活を維持して来たものであること、債権者小西正博は現在ゴム工場の臨時雑役工として一日平均二百円の賃金を受けているのであるが、右小西を除く債権者等は全員失業保険金以外の収入がないこと、既に一応職を得ている債権者小西といえども中風のため就業できない父、日雇の母と無職の姉、なお就学中の妹の四名を扶養せねばならぬ立場にあることを窺い得るので、右債権者等にとつては本案勝訴の判決確定あるまで前記賃金の支払を受けられないと重大な生活維持の困難に陥り回復し難い事態を生ずる虞があると認められる。従つて債務者において右債権者等に対し解雇日付より後の起算日からの前記各月額による賃金をその所定日以前に遡ることなく支払うことを命ずる仮処分はその必要の存するものといわなければならない。

五、結論

債権者重光容輝、同中地留一、同岡崎忠一郎三名に対する前記解雇の意思表示が有効と認むべきこと前示のとおりであるから、爾余の点について判断するまでもなく右債権者等の本件仮処分申請は理由なきものとして棄却すべく、右三名以外の爾余の債権者等の本件仮処分申請はいずれも理由ありとしてこれを認容すべきものである。

よつて申請費用の負担につき民事訴訟法第九十三条に従い、かつ同法第九十二条を類推適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 日野達蔵 戸根住夫 高山晨)

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